デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「じゃあ、そうしてもらおう」

「素敵……アラエが私に、調香したトワレ、贈ってくれるなんて」

調香師に連れられ、別室に入った二人。

前掛けをつけた調香師がデスクについて、香料の瓶を並べながらアラエに聞いた。

「イメージなどございますか?」

……イメージ。

「花の香りがいい」

「ああ、王道でございますね。使いやすくてようございますよ。花はどういった感じの?」

調香師が隣の彼女を見て、少し目を細めた。

「大輪の、華やかに咲き誇る真っ赤な花、といったところでしょうか?」

片目をつぶり、彼女がその美しい顔をポッと染めた。

「いや」

静かにそれを否定する。

「白い、楚々とした……だが路傍に強く孤高に咲く、野の花だ」

驚いた彼女がまた顔を赤くして、アラエを見つめた。

「アラエ……そんなロマンチックな事言うの、初めてね。今日はどうしたの?嬉しいからいいけど」

調香師はわずかに眉をひそめた。

「お隣の女性に、お贈りになるのですよね?」

「ああ」

「そのイメージでお作りして、よいのですね?」

「ああ」

………なるほど、そうか。

調香師は香料の瓶の蓋を開けた。

………なんて奴だ。

アラエの意図を理解して、心の中で小さく呆れる。

だが、仕事は仕事だ。

しばらくして、アラエのイメージ通りの香りが、彼女に贈られた。