デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

きらびやかな王都は、『魔』の襲撃の影響もなく、いつもの賑わいを取り戻していた。

「こっちよ、いつもこの店で買うの」

腕にしがみついて、身をすり寄せながら歩く。

「ああ」

店が分かると腕を解き、スタスタと中へ入っていく。

「もう、アラエったら!こういうお店だからって、恥ずかしがらないで?恋人同士で来る人たち、たくさんいるのよ」

小走りで追いついた彼女が、ころころ笑いながら、またその腕を捕まえた。

再びそれをスルリと解き、たくさんの香水の瓶を眺め始めるアラエ。

小さくそれぞれの香りの説明を書いてあるカードを、流れるような目の動きで次々に追っていく。

と、ピタリとその目が一つの瓶に止まった。

手を伸ばし、それをとって小さな蓋を開けて香りを確かめる。

(………ああ、こんな感じだな)

「アラエ、私に選んでくれるの?」

「ああ。たまにはいいだろう」

「もちろんよ!毎日つけるわ。だって、アラエの好きな香りなのよね?」

その時初めてアラエは彼女を見て、にっこり笑ってうなずいた。

「いらっしゃいませ。こちらの女性の香水をお探しですか?」

ニコニコ笑顔の、上品な中年の男性がアラエに声をかける。

「ああ」

「いかがでしょう、既製品もよろしいですが、調香することも出来ますよ」

その言葉に、アラエは即座にうなずいた。