デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「――アラエ、今日は私服なのね」

甘い匂いの漂う部屋で、シャツを着る彼の後ろ姿に、さっきまでの時間の余韻を残す、うっとりとした表情の彼女が声をかけた。

「仕事が早く終わったからな」

ベルトを締めながら言う。

「じゃあ、今日はゆっくり一緒にいられるのね」

嬉しそうに声を弾ませて、その背中に抱きついた。

アラエの赤銅色の瞳が、ちらりと窓の外を見る。

日がとっぷりくれて、夜になろうとしていた。

(……………)

少し顔をしかめたあと、女に向き直る。

「お前、その香り」

「え?」

「いや。…………香水屋に行かないか。まだ開いているだろう」

その美しい目を丸くする彼女に、微笑みを貼り付けて言う。

「アラエ、私にトワレ、買ってくれるの……!?」

うなずく彼に、頬を上気させて瞳をきらきらさせた。

「待ってて、すぐに支度するわ!」

そのしなやかな身にシーツを巻き、いそいそとワンピースを選び始める彼女の背中を、冷たい真顔で見やった。



――“わーかった、彼女さんの匂いだ!”



その白い頬を少しピンク色にした、あの笑顔。

唇を噛んで、目をそらした。