デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「そんなナリをしているくせに、あなたはそこらの女に無い強さをお持ちだ。それから……優しさも、ひたむきさも」

ほのかに顔を赤くして、大股で歩きながらアラエは言う。

「醜いなら醜い女らしく、卑屈に怯えていれば良かったんです。それなら私だって、丁重にあなたを蔑んでいられた。調子を狂わせられることもなかった。あんなに――」

あんなに、この娘の言葉が嬉しいと。主君やカナンが羨ましいと思うことなんかなかったのに。

王の残り香で、こんなに動揺する事なんかなかったのに。

しばらくアラエの後ろを歩きながら沈黙していた桜は、

「ごめんなさいアラエさん、よくわからないけど……やっぱり私のせいなんですね?」

よくわからない!?

「この鈍いところも、心底イラつきます!」

言ってしまってから、ハッと口をつぐんだ。

なんで、こんな言葉が出てくるんだ。

まさか。いや違う、冗談じゃない。こんな女………。

そこまで女に不自由なんかしていないじゃないか。

カアッと顔が熱くなる。

「アラエさん」

優しい声が、アラエの耳に届いた。

「私、アラエさんが言ってくれるような立派な人間じゃないですよ。いろんなものから逃げてたんですから。あきらめて、卑屈になってたんですよ。今だって……」

風に飛ばされそうな苦笑いをして、彼の赤銅色の瞳を見つめた。