デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「…この人は太ってるけど、好感度はそのへんの女優さんよりずっと高いんだよね…」

きれいにメイクされた大きな顔を、子猫に頬ずりしながら、タレントはMCをつとめていく。たしか先週結婚を発表したばかりだったはずだ。

そう、たとえ外見が美しくなくとも、それを魅力に変えることができるなら。人は愛される。


「……っ」

桜はぎゅっと唇をひきむすんだ。

私は、ほんとうに、ただデブスなだけ。
家族やクラスメイトを言い訳にして、努力から逃げてる。楽なほうに逃げてる。あきらめてる。

でも、本当は、愛されたい。かわいいワンピを着て、友達とおしゃれなカフェにいって、恋愛だってしてみたい。

でも、ムリだ。

だって、逃げてばかりのくせに、願望だけは一人前の女なんか、誰が愛してくれるだろう?


じんわりとにじんだ画面の向こうで、タレントの甲高い声が猫の生態を解説している。

<猫ちゃんのおヒゲはぁ、アンテナのような役割なんですよ~!切れちゃったら、まともに歩けなくなっちゃうそうです~!!>


「部屋に行こう……ここは広すぎるわ」


桜はテレビを切り、自室へ向かった。