デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「我が君?」

黙ったままの主君に、怪訝そうな顔をして、その中年の統括長は顔を上げた。

と、その背筋が凍りつく。

先程までの輝くような優しい微笑みから一転、その顔は冷たく無表情に冴えていた。

暗く静かな紫の瞳の奥に、蒼い炎が揺れるようだ。

極度の怒り。

それは氷のように静かなのだと、その場にいる臣下全員がおののいた。

―――あの蛆虫共が、我が王都と臣下を。

そして。

―――あの汚らわしい爪で、私の最愛の体を。

ゆっくりと、その唇に冷酷な笑みが浮かぶ。

「………武官達に首を斬らせる必要はない」

「はっ……?……」

「武官の剣は、彼らの誇り。それは人の悪を誅するものであり、蛆虫共の薄汚い血で汚されて良いものではない」

統括長はまた頭を下げたが、困惑する。

ではどうするというのか。まさか、そのまま放すのか?

「王都の外に、鉱山があったな」

ゾッとするほど静かな声で、かたわらの近侍に聞く。

「は、はいっ……スベイナ鉱山がございます」

びくっと体を震わせ、しどろもどろで答える。