デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

逃げてる?

何から?

(逃げてなんかない。私は王様が好き。それだけは本当だもん)

得体の知れない自分自身にきっぱりと反論して、胸の上でぎゅっと拳を握り身を起こした。

うん、と迷いなく一つうなずいた時、静かな音がして戸が開かれ、王が戻ってきた。

しっとりと濡れた藍色の髪に、少し上気した肌、ゆったりと合わせられた白い夜着。

(い……い……いちいち色っぽいよぉ!!)

もう緊張で顔を赤くしながらぱっと目をそらした。

(はぁ……覚悟が鈍りそう)

が、もう遅い。

そんな桜の心境など露知らず、王は微笑んで近寄ってきた。

「待たせたな。そなたも湯を使って参れ。今日一日、庭とは言え馬に揺られて疲れただろう、ゆっくりして来い」

「はい、でわ、しつれえします」

そそくさと立ち上がり、赤い顔でぴゃっと部屋を出て行く桜の後ろ姿を、少し声を立てて笑い、見送った。