デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「さて……良い時間だ」

シュル、と髪紐を解く。

「湯を使おう」

「!」

ぴくり、と桜の指が止まった。

現実を思い出す。

思わず顔を上げると、口元はごく薄く笑っているが、目はまっすぐこちらを見据える彼がいた。

「………」

少しずつ、顔が熱くなり始める。

「行こう、桜」

手を取られ、そっと立たせられた。

「あ……の」

(お、お、お風呂も一緒に!?)

間抜けなことに、予想外だった。

目を泳がせて、あうあうと口を開け閉めする。

そんな様子の彼女を、少し眉を寄せて見た。

「何だ、それは考えていなかったのか?」

「あの……はい……」

真っ赤になってうつむく。

しばらく面白くなさそうに顔をしかめていたが、あきらめてそっと彼女の体を抱いた。

「仕方ないな……。最初だけ、今だけ許してやる」

「王様」

「次からは、共に入ってもらう。……ま、焦らずとも時間はたっぷりあるからな」

恥ずかしいことをサラッと言われて、桜は身を固くしたが、ふふ、と静かな笑い声を残して、王は部屋を出ていった。