デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

素直になれない皮肉屋な彼の、精一杯の誠意の表し方だった。
それはシュリにも伝わったようで、一つ頷くと腕組みを解いて愛馬へ飛び乗った。

(あ、出発するのかな)

その様子に、何も知らない桜は馬に乗ったシュリの足元へ。
自分を見上げる黒い瞳に、シュリは苦笑いした。

『悪いな桜、今日はあっちだ』

赤紫の馬の方を指差し言う。

(え……)

振り返ると、アスナイが先に騎乗し、こちらを見ている。

(……う…こっちに乗れってこと…?)

桜の表情が強張った。とっさに、目線が伏せられる。

『お前はこっちだ。乗れ』

努めて静かに、彼女に呼びかける。

『さあ。………桜』

身を乗り出し、手を差し伸べた。

冷たくて恐い人としか思えなかった相手から、優しく自分の名を呼ばれ、桜はびっくりして顔を上げた。

自分を真摯に見つめる、紺色の瞳。

差し伸べられた手。

「………」

迷いながら、桜はそっとその手を取った。