デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「ん………」

ふっと、目を開けた。

涼しい風が相変わらず吹いていたが、陽はだいぶ傾いている。

(寝ちゃった)

ゆっくりと意識が覚め始める。

……ん?

はた、とこの状況を思い出す。

目の前に、白いシャツの胸。
背中と腰にしっかりとまわされたしなやかな腕。

「!」

ハッとして顔を上げると、静かに規則正しい寝息が聞こえた。

わずかに開かれた形のよい唇からそれは聞こえて、長いまつ毛に日の光が落ちて、滑らかな頬に影を作っていた。
流れる藍色の髪が、碧く艷やかに光っている。

(……きれいだなあ)

それを見つめていた。

しばらくして、この広い庭を抜けて深宮に戻るには、そろそろ起きて馬に乗ったほうがいいかなと思い、そっと王の腕を抜けようとする。

すると、フッと彼の目が開いた。

一度まばたきして腕の中の桜を見、ふわりと微笑んだ。

「眠り込んでしまった………こんなことはあまりないのだがな」

そなたを抱いていたからかな、と言って、またその温もりを抱きしめた。