デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

木陰で一服した後、桜が立ち上がった。

広い池を見たくて、そのほとりへ足を進める。

相変わらず澄み渡って、鏡のようだ。

時々さわさわと吹く風が、その面にそっと波をたてていた。

そよぐ風に揺れる黒髪を近くで見たくて、王もかたわらに来る。

「池っていうか、湖って言ったほうが近いかもですねえ」
桜が言うと、王は笑ってうなずいた。

「そうだな。まあ、このくらいになってくると、定期的に池の清掃をしなくていい。十分な自浄作用が働くからな。却って楽だ」

「そうなんですか」

「ああ。庭の緑がここまで広大なのも、ある程度自然に任せているのさ」

「……そういえば、前カナンが言ってました。鳥も飼わなくても勝手に来るって」

「そうだ。王宮の庭は公宮から奥にあるゆえ、私と限られた臣下以外は見ることはない。だから私の好きにしているのだ。生きとし生けるものは、そのままの姿が一番美しい」

目を細め、緑を眺める。

ふと桜は足下に目を落とした。水の縁に、石がたくさん転がっている。

しゃがんで、手頃な石を探し始めた。

王が不思議そうに見守る中、平たい石を見つけて立ち上がった。

「王様、水切りってしたことあります?」

「水切り?」