デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

事務仕事が大いにはかどったので、謁見もいつもよりは早く終わりそうだ。

主君の斜め前に控えて謁見人を誘導しなながら、アラエはちらりとその表情を見た。

いつもよりも、わずかに微笑みが大きい。いつもの水を打ったような静かな瞳ではなく、光があった。

いや、自分がそう感じるだけかもしれないが………。

ふっとわずかに目線をめぐらし、今度はあの金髪の後輩を見る。主君の後ろに、相変わらずの無表情で控えていた。

謁見人と王とのやり取りを聞きながら、胸のうちになんだかムカムカとやり場のない苛立ちが湧きおこる。

素直に頭を下げて、無理に自分を取り繕わないでほしいと笑って言っていた、あの清い微笑み。

桜が王の事をどう思っているかは『魔』に怪我をさせられる前から何となく分かっていた。けれど、近侍である自分にもあまりに対等でいたから。

……あんなふうに、自分に屈託なく笑っていたから。

分かっていた事なのに、なぜか裏切られたような気持ちがあふれる。

宮中で並んで茶なんか飲んで、とりとめのない言い合いをしたのも、自分は初めてで、心地よいと思ってしまった。
だが、カナンともよくそういう事をしていたと。

……面白くない。

だが、そんなことを思う自分が一番いらつく。

自分が生きる世界において、幼稚で理不尽で、邪魔でしかない感情だ。

私が柄にもなく、救われたと思ったのに。
あんな醜い女のくせに。

気にするな。どうなろうと知ったことではないではないか。あんな女。

(すねた子供か、私は)

眉を寄せ、心で舌打ちした。