デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

いつもよりもずっと早く、執政の間の扉が開かれ、王が姿を見せた。

近侍と近衛が深く礼をしたあと、謁見の身支度のための部屋に向かう彼に付き従う。 

先頭に出るときに、王の目がアラエに留まった。

「……アラエ」

小声で呼ばれ、少し驚いて顔を上げた。

「はい」

「今日だが、我が客人を深宮に連れてこなくて良い」

「は……」

意外な言葉に、目を丸くする。

「昼からあれと庭に出るゆえ、私が自ら迎えに行く。それから、夕方まで待たなくて良い」

「………」

まばたきする彼に、ふっと微笑んだ。

「今夜は、あれは深宮に……私の部屋に泊まるゆえ。汝は昼から自分の残務を片づけよ」

低く深い声に、一瞬固まった。

「かしこまりましてございます……」

頭を下げる。

なぜか、胸の中に動揺が広がっていった。

王にとって、桜がもはや単なる客人でないことは分かっている。

だが、昨日見せた屈託のない表情や、年の割にどこか幼い顔を見て、その真っ直ぐさに救われたから。

『そういうこと』をすることとのイメージのギャップが激しい。

(何を、今更………)

傷付いたような胸の痛みに驚きながら、唇を噛んだ。