デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

桜はすぐにグラスを持ってきて、アラエに一つ差し出した。

「今度は落ち着いて飲んでくださいね」

ふふ、と少し笑う桜の顔を見て、目元の赤みが強くなる。

(………何しているんだ……私は)

自分で自分の行動に呆れるが、空っぽだった胸の中が、ゆっくりと温かくなっていく。

「ありがとうございます」

自分でも驚くくらいの穏やかな声が出た。

そのまま戸口に並んで座り、ゆっくりと茶を飲んだ。

「恐れながら、桜様」

「はい」

「一つ、お聞きしてもよろしゅうございますか」

「?ええ」

いつも浮かべている微笑みは消えて、いつの間にか、彼本来の少し冷たい表情が表れていた。

「恐ろしくはありませんでしたか。『魔』の前に飛び出した時」

予想していなかった質問に、桜は少しまばたきした。

「え……うーん……そんなこと考えてる余裕がなかったっていうか……とにかく王様が心配で……」

ポッと頬を染める。

思わずアラエは桜の顔を見る。

「我が君は、不死の身をお持ちです。あなた様もご存知だったでしょう。それなのになぜ?」

「あー、忘れてました」

「は……」

「私、王様とか女王様とかいない世界から来たんです。だからつい……王様も、普通の人のように思ってて」