「?」
誰かな?
首をかしげながら、返事をして戸を開けた桜の目に、くすんだ黄緑の髪が映った。
その赤銅色の瞳を伏せて、一礼する。
「アラエさん」
少し驚いてその顔をまじまじと見た。
「どうしたんですか?こんな時間に」
桜の問いに、少し眉をひそめて、目線を泳がせている。
「いえ……その……」
正直、自分でもよく分からない。
残務があると言って女の部屋から出てきたが、今日の仕事はとっくに終わっていた。
ただ、さっきの女とのやり取りのあと、何だか自分の全てが空っぽな気がして、桜の黒い瞳を見たいと思ったのだ。
これまで宮中で上手く立ち回る事を心がけ、出世を順当に重ねるために相手を喜ばせる術はたくさん身につけた。
女性たちは向こうから寄って来たし、彼くらいになると近侍の給与は高額だ。
桜の事は、少々変わった馬鹿正直な醜い女としか思っていなかったのだが。
王のために迷わず『魔』の前にその身を投げ出したと聞いたとき、ごまかしようもなく、その嘘のない強さに強烈に惹かれた。
ずっと忘れていた、そして自分が失ってしまった何かを桜が持っているように思えて。
………会いたくなったのだった。
誰かな?
首をかしげながら、返事をして戸を開けた桜の目に、くすんだ黄緑の髪が映った。
その赤銅色の瞳を伏せて、一礼する。
「アラエさん」
少し驚いてその顔をまじまじと見た。
「どうしたんですか?こんな時間に」
桜の問いに、少し眉をひそめて、目線を泳がせている。
「いえ……その……」
正直、自分でもよく分からない。
残務があると言って女の部屋から出てきたが、今日の仕事はとっくに終わっていた。
ただ、さっきの女とのやり取りのあと、何だか自分の全てが空っぽな気がして、桜の黒い瞳を見たいと思ったのだ。
これまで宮中で上手く立ち回る事を心がけ、出世を順当に重ねるために相手を喜ばせる術はたくさん身につけた。
女性たちは向こうから寄って来たし、彼くらいになると近侍の給与は高額だ。
桜の事は、少々変わった馬鹿正直な醜い女としか思っていなかったのだが。
王のために迷わず『魔』の前にその身を投げ出したと聞いたとき、ごまかしようもなく、その嘘のない強さに強烈に惹かれた。
ずっと忘れていた、そして自分が失ってしまった何かを桜が持っているように思えて。
………会いたくなったのだった。
