デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「………っ」

顔の赤みが強くなる。

手が危うく止まりそうになって、あわてて彼は目をそらした。

「王様?どうしました?」

ほら、これだ。まったく。

美しいという言葉は散々言われ慣れているのに。
どうしてこの娘に言われたら新鮮な驚きと、嬉しさと、そしてものすごく照れくさいのだろうか。

「……何でもない」

他意のない言葉に翻弄されるのも、なんだか癪だ。

そう思った彼は、黒髪から手を外して、その白い頬へ添える。

すると桜の柔らかな小さな手の温もりを、左頬が感じた。

「……」

まずいかもしれない。

桜が慣れるまえに、こっちの理性が……。

相変わらず頬を染め、潤んだ黒の瞳が揺れてこちらを向いている。

すすっ、と手を頬から顎へ。

ワンテンポ遅れて、そろそろと桜の手も形のいい顎をなぞる。

(お肌すべすべ……)

感心する。こんな外見に関心がないなんて、贅沢だなと思いながら、その口元を見つめた。