デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

わずかに頬を膨らませる彼に、少し緊張がほぐれる。

「そうなんだ……でも王様だったら、もしワンピース着てもものすごい美人のお姉さんになるかも」

笑う桜に、顔をしかめた。

「冗談ではない。何が悲しくて、よりによってそなたに女装なんぞ勧められなければならん」

「ええ?でも一回見てみたいなあ。きっとすっごいキレイですよ」

「嫌だ。大体私は自分の外見なんぞに興味はない。何百年も同じ顔だ、いい加減うんざりだ」

心底そう思っているようで、眉を寄せて目を閉じた。

桜は自分の指の間に流れる紺碧を、目を細めて見つめた。

「こんなにきれいなのに。……外国の、お日さまの光をいっぱい浴びた海の色みたい」

『ぶどう酒色、なせる海』と有名な吟遊詩人が詠った、あのエーゲ海そっくりだ。

世界史の教科書に、そのきれいな写真が載ってたっけ。

そしてじっと、王の目を見つめる。

「目の色も。アメジストみたいです」

「あめじ…?」

「私の世界の、紫色の石です。パワーストーンなんですよ。みんなブレスレットとかにして、お守りにしたりするんです」

ふふっ、と笑った。

「だから王様が近くにいてくれたら、悪いものなんか全部はね返してくれそうですね」