デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

姿勢を正して、ちょんと王の前に座り直す。

そして軽く両腕を広げた。

「お願いします……」

「………っ」

驚きにまた目を見張った。

耳まで赤くして、上目遣いの黒い瞳が見つめる。

「触って……王様」

「!」

その言葉に、彼もまた顔を染めた。

「?」

いきなり固くなった雰囲気に桜が少し驚くと、紫の瞳がジロ、と睨む。

「そなた、慣れてないと言う割になぜそう……」

「え?」

「……何でもない。他の人間にそんな顔、もう見せるでないぞ」

「はぁ……?はい……」

いまいち分かっていなそうな返事に、少しこめかみを押さえたあと、ゆっくりとその黒髪に手をのばした。

「………」

緊張にまばたきを多くして、おずおずと桜も流れる藍色の髪を優しく梳いた。

(ひゃーサラサラ……男の人なのに、何でこんなに長い髪が似合うのかなあ)

ふふ、と嬉しそうに王が笑った。

「……今初めて、髪が長くて良かったと思った」

「え、そう……ですか?」

「ああ、いつも切りたくて仕方がないのだがな。鬱陶しいし邪魔だし、女装しているようで気色悪い。髪や髭の長さは一つの威のあらわれなのだと臣下たちは言うが……」