それからしばらくして、フラウとルネが満面の笑みで二人分の膳を丁寧にセッティングして退出し、少し落ち着かなく待っていると、

「……桜」

静かな呼びかけとともに、アクセサリーだけを取り去った姿の彼が戸を開けた。

「あ、王様。おかえりなさい」

大して深い意味はなく言ったその言葉に、嬉しそうに微笑んだ。

「ああ。……ただいま」

部屋に入り、目の前に夕餉の膳が置かれたソファに腰かけた。

横についた桜は早速言う。

「王様、ありがとうございました。シュリさんのこと……頑張って罰を軽くしてくれたんですね」

ぺこんと頭を下げると、少し苦笑いして頭を振った。

「いや……あれが武勲を数々上げていたからな。優秀な臣下はなるべく活かしたい。それは誰であろうと変わらない」

「ううん、でもありがとうございます。生きていれば、また必ず会えますよね」

微笑む桜に笑い返し、その体に両手をまわす。

「そこまで言うのなら、そなたからまた口づけの一つももらいたいものだな」

「えっ」

固まる彼女に、少しその目を細めてスリ、と頬を合わせた。

「そんなにシュリのことばかり気にかけられると……妬いてしまう」

「えぇ?」

ふふ、と少し意地悪な表情になり、「…さあ」と瞳でその唇をうながした。