デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「我が君、恩賞の名簿にある名前は、以上でございます」

後ろに控える文官らが二人がかりで名簿をカサカサと確認した後、王に言った。

軽くうなずき、脚を組み替えた。

各駐屯地から来た人数はまちまちなので、恩賞が平等に行き渡るよう、あらかじめきちんと計算されている。

それを単に読み上げ、「大儀であった」と言うだけなのたが、それでも単純に数が多いから、無事に終わった王はやれやれと息をついた。


………さて。


その目元が、少し厳しくなる。

一度まぶたを閉じたあと、静かに開けた。

「王都武官のシュリをこれへ」

凛とした声で命じる。

一礼した文官が、部屋を出ていった。

昼の、桜の様子が思い出される。

必死の表情をしながら自分の腰に手を回して、あの柔らかい体を寄せてシュリの命乞いをしていた。

初めてワガママらしいワガママをされた気がする。

今まで女に体を寄せられてその願いを聞いてしまう男達を、何と愚かなと冷めた目で見ていたのだが。

(無理だな、あれは。抗えない)

きっぱりあっさり自分の間違いを認め、少しバツが悪そうに頬を染めた。
桜がこのおねだりを乱発するような女でなくて良かった、と思った。それこそ治世が乱れそうだ。

しかし、そのおねだりの内容が服や宝石や離宮なんかではなく、一介の武官の刑罰の軽減とは。

(つくづく、変わった娘よ)

苦笑いし、これからも振り回されるだろうと覚悟しながら、前を向いた。