デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

苦しそうに目をつぶり、下を向く桜。

アスナイは小さく笑った。

「………そう、思ってたんだけどな」

今でも、そうなんだけどな。

そっと、両手で桜の顔を包み、上を向かせた。

「あんなもの、見せられたらな」

「…………」

「命までかけられたら………あきらめるしかないだろう?」

こうやって、彼女が生きて自分を見つめている。

これ以上何を望めるのだろう。桜に選ばれなかった自分が。

あんな現場を見ておいて……。

「ごめんなさい……アスナイさん……こんなに、思ってくれているのに……」

たまらず涙声になる。

その言葉を聞いて、思わずその身を抱き寄せた。ギュッと強く腕に抱きしめて、自分と密着させる。

上を向いた桜の白い顔。その目を、悔しさと切なさに自分の紺色のそれを細めてじっと見下ろした。

そのまま、無言でしばらく見つめた。

みっともないと分かっていても、最後に賭けたくて。

「…………」
「…………」

涙に濡れながらも、静かに自分を見返す、その黒い瞳。