デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

王はアスナイの紺色の瞳を見て、静かに微笑んだ。

「昨日は、我が客人が大層世話になった。……汝の迅速なる処置で、一命をとりとめたのだ。礼を言う」

スッと目を伏せる王に、すぐ首を振った。

「……勿体のうございます」

「いや。汝があの時予を正気にしてくれなければ……出血を少なくしていなければ、間違いなくあれは死んでいた。桜を救ったのは汝だ、アスナイ」

その言葉に、主君を怒鳴りつけて桜を横たわらせたのを思い出し、慌てて頭を下げた。

「我が君に対し、不敬の数々……いかような処罰も」

その様子を見て、王は少し声を上げて笑った。

「礼を言うと言っておろうに。恩賞をとらせるが、何か望むものはないか」

「…………」

欲しいものは、一つだけだった。

この、どうしようもない虚無感。

桜の返事を聞く前に、わかってしまった。彼女が選んだ人を。

一度目を閉じ、口を開いた。

「では、恐れながら……一つございます」

せめて、桜の言葉が欲しい。自分に向けた、真摯な言葉が。