デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

少しして、まだ赤い顔のまま、桜はのそのそとベッドから降りて膳の前に座った。

向かいには『幸せ』と顔に書いてあるかのような微笑みを浮かべた、藍色の髪の美しい人。
わずかに頬を上気させ、にこにこと愛おしそうにまっすぐ自分を見つめている。

(敵わないなあ、もう)

はひー、と小さく唇の間から息を吐いて、箸を取ろうとした。

その姿を見て、ふと思いつく。

「桜。まだ左腕は使えぬであろう、不便ではないのか」

「え?」

一旦止まって、自分の包帯を巻かれた左の二の腕を見たが。

「ああ……いえ、だいぶ動かせますよ、もう。傷口もほとんどふさがっちゃいました。すごいですね、神力って」

軽く頭を振ると、その微笑みを崩さず言う。

「だが、食事や着替えの際は、思い通りにいかぬのではないか」

「いえ……利き腕は右ですから大丈夫ですよ」

彼の意図が読めず、首をかしげる。

するとおもむろに彼は自分の箸を取り、小鉢の中の煮物をひょいと挟んで桜の口元へ差し出した。

「口を開けよ」

「!?」

呆気にとられる桜に、微笑みを深くする。

「なっ………」

「さあ」