デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

桜の傷の負担にならないよう、ゆっくりと馬車は宮に向かって進んでいた。

横たわったまま、夕暮れの風を頬に感じている。

そのかたわらには王が座っていて、その手を握っていた。

「家族に会いました」

ポツンと桜が言った。

「家族?……そなたのか」

血を大量に失ってしまって回復したばかりだからか、なんだかぼんやりとした頭で、それでも微笑んで王を見つめた。

「ええ……ただの夢だったのかもしれないけど、嬉しかった。お父さんもお母さんも、私を心配してくれてて……弟にもほんとに久しぶりに『姉』って呼ばれました」

「…………」

「王様が、私に言ってくれた通りでした。ちゃんと、愛されてた」

目を細め、微笑みを少し大きくした。

「帰ってきて、桜…って。お母さん、泣いてた」

しばらく彼女の顔を見つめていた王は、低い声で小さく言った。

「私とて同じだ」

握る手に力を込めて、そっとその額に唇を寄せる。

「……生きた心地がしなかった。ずっと、そなたをお帰し給われと、神に祈っていた」