デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

………?

自分の後ろ、キッチンのほうからだ。

眠気に引きずられそうになりながら、振り向く。

四つの人影があった。

一つはうずくまり、三つの影は立っている。

すすり泣きは、うずくまった一つから聞こえてきた。

女性の泣き声。

『桜………桜………』

自分の名が呼ばれた事に、不思議に思ってよく見る。

……お母さん?

いつもきちんとセットされた髪が、今日は乱れて何筋か下がって揺れている。

驚いて、その涙が伝う横顔を見つめた。

よく見ると、父親が唇を噛んで立ち尽くしている。その拳は、小さく震えていた。

弟もいる。揺れる瞳を足下に向けて、まばたきもしない。

あとの一人は、桜にも見覚えがあった。父の代理人……顧問弁護士だ。


……あれ?三人とも、いつ帰ってきたの?


声をかけるが、誰にも聞こえていないどころか、桜の姿も見えないらしい。