夢を見ていた。
いや、夢と言うには、あまりにリアルな。
(あれ?)
フッと、桜の意識は目を開ける。
広い部屋に敷き詰められた茶色の絨毯。閉められたカーテン。母が、高級ファブリックの店でオーダーしたものだ。
大きなイタリア製の白いカウチと、ダイニングセット。
一瞬の戸惑いのあとで、ああ、私の家だと気がついた。
もう何年も住んでいなかったかのように、現実味がないその広い部屋。
少しモヤがかかったかのように視界がぼやけていたが、確かにこの間まで独りで住んでいた家だった。
(………どうやって、帰ってきたのかな?)
何だかすごくだるくて、疲れていて、自分がどこにいたのか思い出せない。
(私、どこから帰ってきたんだっけ?)
首をかしげた。
学校?コンビニ?
どれも違うような。その『どこか』を思い出そうとすると、何だか胸が苦しいような、焦るような、不思議な気持ちになる。
(『帰って』きた?ここに?)
………私の帰る場所って、ここだったっけ?
