デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

少しの重苦しい沈黙のあと、絞り出すような声で、アスナイは答えた。

「……王宮神処に運んでも……意味をなさないかもしれませぬ」

「何だと?」

はっきりと震える臣下を、愕然として見た。

「何……何を言っている?」

「………」

「神処で、癒やせぬ傷や病はない。それは汝とてわかっていよう?」

「わかっております」

「ならばなぜ、かような妄言を申すかっ!」

カッとその顔を怒りの表情にして、アスナイを怒鳴りつけた。

「傷や病なら癒せましょう!なれど………その命が尽きてしまっているならば、いくら神力でも打つ手はございませぬ!!」

ついにアスナイも、その狂いそうな心を面に出して叫んだ。

息が止まったような心地がして、王は固まった。

「人間は、半分の血を失うまでは死なないと申します。しかしこのような出血の場合、3割の失血でも重篤な状態になることが考えられます」

「………」

「今止血をしておりますが……やはり出血が止まりません。王宮神処に着くまでに、どれほどの時間がかかるか。この娘の血が、どれほど失われるか………」

みるみるうちに血の気が引く王の顔を、苦しく見た。

「王宮神処に着くまでに、この娘の……桜の命が持つかどうか、わからないと申し上げているのです!!」

医学の知識があるがゆえに、残酷な事実を誰よりもわかってしまう彼は、また悲痛に叫んだ。