デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

その時、右往左往する臣下の中から、人影が飛び出してきた。

「我が君、失礼いたします!」

グレーの髪をふり乱し、蒼白になった顔に紺色の瞳だけをまたたかせた、端麗なその武官。

「アスナイ!」

シュリが息を呑んだ。

「桜の傷を診ます。こちらへ横に」

緊迫した声で、手早くマントを脱いでその場に敷いた。

だが、焦点の定まらない目を見開きながら、震える王は首を振った。

「ならぬ。この娘は私のものだ。もう何人たりとも触らせない………私の、私だけの………」

「我が君!!お気を確かに持たれませ!!」

アスナイの厳しい声に、ハッと意識を取り戻す。

急いで彼女を横たわらせた。

傷を一目見たアスナイは、顔を歪める。

鎖骨から左腕にかけての深い裂傷、そこからの出血。鮮やかな赤は、まるで生命のカウントダウンの様に、心臓の鼓動に合わせて流れ出していた。

(まずい)

唇を噛み、気を抜くと震えて力が抜けそうになるのをこらえて、ためらいなくシャツを脱ぐ。