デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

長い黒髪が、乱れて地面に広がっていた。

白いその頬を王の方に向けてはいたが、いつものあのみずみずしさはない。

体は横たわり、ピクリともしない。血だけがゆっくりと地面に広がっていく。
まぶたは閉じられて、その瞳は見えなかった。

凍りついたように動けない体。
まるで悪夢を見ているかのような鈍い思考。


桜。なぜ。王宮にいるはずで。なぜ。あの部屋に、いるはずで。なぜ、なぜ。

なぜ、こんなところで。なぜ、こんな姿に。


「桜っ!!」

その時、人の群れを蹴散らして、シュリが飛び出してきた。
倒れた彼女を見て、顔色を失い息を呑む。

「桜っ!!おい!!」

恐怖に目を見開き、震える腕でその肩に触れて揺らした。


と、上空から狂ったような嘲り笑いが響いた。

「誰かと思えば、お前か、異形の人の子!」

近衛の攻撃をかわした『魔』が、マントを取り去り、大きな漆黒の翼を広げて空中に浮かんでいた。