デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

その藍色の髪を乱し、王が振り返る。

『魔』が強靭な脚と振りかざした爪で、一足飛びに王に飛びかかる。

そして、やっと人の輪を抜けた桜が、フードが脱げるのも構わずに、二人の間に飛び込む。


それが同時だった。


また、身を引き裂く音とともに、バッ、と赤い飛沫があがった。

見開かれた紫の瞳と、細められた闇の瞳。

そして少し揺れて潤む黒の瞳。


ドシャッ、と体が地面に倒れる音がした。


「おのれ!残党か!!」

近衛達が、一斉に剣を抜き、『魔』に襲いかかる。




王は、赤い小さな水溜りが、ゆっくりと自分の足元に広がって行くのを見ていた。

その美しい頬には血がこびりつき、肩と胸にも少し。


「………さ…く、ら………?」


呆けたように、その小さな声が、唇からこぼれた。