デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

馬を飛ばしてきたシュリと桜は、もう事態が収束に向かいつつあることに驚いていた。

人混みの後ろで、建物の陰にそっと身を隠して様子をうかがう。

抵抗する『魔』達が、次々と始末・捕縛されていく。

もっとも、右往左往する人混みで、桜からはほとんど見えなかった。

「シュリさん……どうですか?」

「大丈夫だ。……さすが王だな。年の功ってやつだぜ」

軽く頭を振りながら、油断なく現場や自分達の身の回りに気を配る。

「そうですか……良かった、私の方からは見えないから」

「お前は見ないほうがいい」

大量の血、『魔』達の翼や体の一部が散乱する凄惨な現場を、シュリは無表情に見ながら言った。

(……相変わらず、容赦ねーな)

およそ『人道』という言葉が全く当てはまらない殺戮に、さすがに背中が冷える。

まさに『害虫駆除』という言葉がぴったりの、無慈悲なものだった。

王は臣下や国民に対して滅多に声を荒げたり、血なまぐさい事をしたりしない。
いつも静かな表情で皆の声に耳を傾ける、優しい眼差しと美しい微笑みの、聡明な名君。

それだけに、この狂気じみた現場は一層怖ろしく感じる。

慈悲の心を捨て去った彼の姿をかいま見るようで。