デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

王はそれを見て、声を立てて嘲笑した。

「全く、この期に及んでまだそんな真似をするか。王族である貴様らが魔力を使える事くらい、とっくにわかっている」

そして片足を上げ、ガツッ!と『魔』の頭を踏みつけた。

うめき声を上げるその顔を踏みしだきながら、なおも嗤って言う。

「貴様らを縛っているその縄は、神力にてあざなった縄だ。そう簡単にちぎれるものか」

一旦足を外したかと思うと、次の瞬間、『魔』の顎を蹴り上げた。

「ぐぁ!」

シュン、と腰に差されていた王の剣が抜かれ、落ちてきた顎をピタリと受け止める。

ゴフッ、と咳き込む『魔』の鼻と口から、血が飛び散った。

そして、王は誰もが見惚れるような美しい微笑みを浮かべて、その傷ついた顔を見た。

「害虫数百匹の命か。貴様らにとっては高い勉強代であったな。残りの蛆虫が、少しは賢くなるよう地獄で祈るのだな」

そのゾッとするほど穏やかで優しい声に、そばで王を守る近衛達までもが震え上がった。

ヒュン、と風を切る音とともに、『魔』の頭がボールの様に2メートルほど右に飛んでいく。

「片づけよ。我が民の様子はどうだ」

まるで読み飽きた本のページをめくるように、サラリとその心は国民の無事へと向いた。