翌日。

すっかり熱がひいた桜は、シュリとともに馬に乗った。

獣にやられた左腕は動かすとまだ痛むが、出血も止まり、清潔な包帯が巻かれている。

朝の早いうちに、宿の店主に気付かれないようにこっそりと三人は出発した。


(そういえば…この二人は何者で、私をどこに連れてくつもりなんだろう)


昨日の異常な状態から、冷静さを取り戻した桜の頭はそんなことを考える。

あらためてよく見ると、大きめのバッグをいくつか持っている。今日は脱いでいるが、昨日は二人とも甲冑を身につけていた。

そして、腰には剣。

RPGで見るような、西洋風のものだ。

(…旅をしてるのかな……でも、なんか庶民て感じもしない)

昨日の見世物小屋の連中のような悪人でもなさそうだが、馬術の巧みさ、時折見せる視線の鋭さは何だろう。

(少なくとも、私を助けてくれたよね。それに…逃げようと思っても逃げられなさそうだし、逃げてもまたあんな目にあうかもしれない)