デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

一方、遠くに響く轟音に、シュリと桜は顔を上げた。

「……何だ?」

シュリが厳しく目を細め、音がした方を見る。

馬を進ませながら、なおも二人がその方向に目を凝らしていると。

「あれ……?青い煙が上がってますよ」

「……狼煙だ」

シュリが低い声で言う。その横顔は緊張し、仕事の顔になっていた。

「さっきの、王様の外出のときの合図ですか?」

「違う。青い狼煙は、危険の時のものだ」

「えっ?」

驚く桜。思わずシュリを振り仰ぐと、彼が息を呑んだ。

「何だ、あれ」

黒い鳥のような群れの塊が、ちょうど狼煙が上がったあたりの上空にうごめいていた。

次々とその影が塊に加わり、黒い塊が大きくなっていく。

「鳥……?」

「違う。『魔』だ」

短く低く言い、ザワ、とその雰囲気を変えるシュリ。

強い目線のブラウンの瞳を群れに向け、手綱を握りしめた。

「……今日だったのか。なるほどな」

「『魔』が、ここを襲うのがですか?」

「知ってたのか」

「ええ……」