デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

桜の腰から片手が離れ、後ろからかすかな衣擦れの音がした。

シュリが最後の衣服を脱ごうとしているのだと分かり、桜は絶望的な気持ちですすり泣いた。

ふとその涙に濡れた顔を上げて目線を横にすると、ベッドのサイドテーブルがある。

その上に、何か載っていた。

手紙や荷物を開封するための、小刀。

(………!)

考える前に、体が動いた。

夢中で飛びつき、その小さな鞘を抜いた。

咄嗟のことで反応が遅れたシュリの手が、空をきる。

あまりに勢いをつけて動いたから、桜は半ば転げ落ちるようにベッドから出た。

「桜」

慌てて腕を伸ばそうとしたシュリに、刃を向けた。

「!」

シュリの目が見開かれ、すぐに厳しく細まる。

はあはあと肩で息をしながら、桜はまだ潤む瞳で彼を見た。

「……何やってんだ、怪我するぞ。こっちへよこせ」