デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

桜の懇願も耳に入らないかのように、強い力でその腕を引っ張って歩く。

あっという間に宿の部屋のドアが開かれ、有無を言わさずに入らされた。

「シュリさん、待って」

震える声は、カチャン、というドアの施錠の音に消えた。

マントを脱ぎ捨てて、剣を差したベルトを外した。それをベッドの枕元の壁に立てかける。
星空の映る窓をカーテンで覆うと、部屋は薄暗い明かりがゆらゆらと揺れていた。

「………」

どうしよう、帰らなきゃ、逃げなきゃと焦る桜をよそに、シュリは部屋にあった酒のボトルを開けて、二つのグラスに注ぐ。

「驚いたから、喉渇いただろ。ほら」

一つを桜に差し出した。

「いりません。シュリさん、お願いだから考え直して。王宮に帰りましょう?」

頭を振ってそう言うと、シュリは桜に差し出したグラスをテーブルに置き、もう片方に持っていた自分のグラスに口をつけた。

ぐっ、と一気にあおる。

空になったそれをタン!とテーブルに叩きつけ、桜に歩み寄った。

顎をつかまれ、上向かされる。

息を呑んだその口を、シュリは自分のそれでふさいだ。