「他の皆にも自慢してくる！」
ほたるは旅館の中を歩いていき、人とすれ違う度に僕を自慢していた。すれ違った人はみんな笑顔で僕とほたるを褒めてくれた。皆に褒められて嬉しかったけど、何より嬉しかったのはほたるが僕を自慢してくれたことだった。
また、周りの彼女を見る目はとても温かいということも嬉しかった。ほたるは皆に愛されている。ほたるもとても楽しそうに皆と話している。すごく幸せそう。
持ち主の幸せは僕の幸せだ。本当に僕は、持ち主がほたるで良かった。
――そう思った時だった。突然、冷たい空気が僕たちを襲ったのは。
「ママ！」
ほたるは旅館の事務室に入ると、ソファに座っていた女性に声をかけた。その女性は黒の着物に身を包み、髪を一つにまとめている。その顔つきはほたるに似ている気もするが、彼女を包む空気は氷のように冷たかった。
