圭哉くんは俺様且つ暴君。




──────ピンポーン



乱れる呼吸を落ち着かせるように、大きく深呼吸する私は、ラルーチェ 208号室の前にいて



───ガチャッ


「圭哉く「おせぇ。」



やっぱり、怒られた。


急いだのに。頑張ったのに。つーか、わざわざ来たのに"ありがとう"もろくに言えないなんてやっぱり人としてダメじゃない?



「……急いで来たのに。」


ブゥと頬を膨らませても、圭哉くんには私の怒りは伝わらない。


「当たり前だろ。お前は俺の、お世話係なんだから。」


「………お世話係…か。」



圭哉くんの言葉を繰り返し口にして、視線を落とした私に"何だよ"と、乾いた圭哉くんの声が聞こえるけど、



「…じゃ、お邪魔するね!」


「は?ちょ…勝手に何だよ!」


いいもんね。
お世話係 バンザイ。



「頭痛いんでしょ?ちゃんとご飯食べないからだよ。」


「ほっとけよ。薬置いて帰れ。」


グイッと掴まれた腕から圭哉くんの体温を感じる。それだけで何も考えられなくなりそうな私は


やっぱり、どうかしてるのかもしれない。


「やだ。……お世話係だもん、私。」


圭哉くんの手を振りほどき、ズカズカとキッチンへと進んだ私は、さっきスーパーで買った食材を圭哉くん家の冷蔵庫へと詰め込む。



「…はぁ。」


勝手にしろ、とでも言うような溜息を最後に圭哉くんはリビングのソファへと沈んでしまった。


…たまには、私のワガママも聞いてよね。ちゃんとご飯食べなきゃ体もたないんだから。