「あーあ、行っちゃった。」
圭哉くんの姿が見えなくなった時、夢子ちゃんは残念そうに言葉を発したけれど
私の気持ちとしては"あー、良かった。"だった。
圭哉くんを遠くから見ることが出来ただけでも、十分過ぎるくらい今の私はいっぱいいっぱいで、
今、何かの拍子で鉢合わせでもしたもんなら…
間違いなく、泣く。
面倒くさい女に名乗りを上げることになる。そしたら益々…圭哉くんに嫌われちゃうかもしれない。
「行こ、夢子ちゃん。」
「本当に良かったの?」
「うん、いーの!!」
近づきたいけど、近づけない。
この距離感は、私と圭哉くんとの心の距離。
「小春、今日はバイト休みだからどっか寄ってく?」
「お、いいね〜!美味しいお店知ってる。」
「お!じゃあ連れてってよ!」
「おっけ〜!」
もう1度、圭哉くんと…並んで歩ける日が来ればいいのにな。