「その気持ちは忘れろ、いいな?」
「…え?」
唐突に突きつけられた言葉を、脳内で繰り返し再生する。
『忘れろ』
そんなの、出来たら苦労してないのに。
「言ったよな?
俺のことは絶対好きになるなって。」
「……。」
「契約違反だ。」
…契約違反。
そうだね、圭哉くんは確かに言ってた。私達の関係は最初から《契約》だったんだもんね。
《俺のことは絶対に好きになるな》
頭の中で谺響(こだま)する、初めて圭哉くんに会った日のセリフ。
「じゃあ、どうすればいいの?」
「だから、忘れろって。」
箸をテーブルに置いた圭哉くんは、落ち着いていて、それでいてどこか冷たい。
「そばにいるのに。こんなにそばにいるのに、忘れろなんて酷だよ。」
情けないほど弱々しい自分の声に驚いた時には、頬を温かいものが伝うのを感じた。


