遠くの光にふれるまで






 しばらくそのままひのえさんと抱き合っていた。

 泣いている彼をなだめるように優しく、ぽんぽんと背中をたたいていたら、ようやく落ち着いたようで、ゆっくりと身体を離し、わたしの顔を覗き込む。

 ああ、そうだ。この顔、見上げたこの角度、距離。全てがあのときと同じ。ただし涙を浮かべた顔は初めましてだ。

「……本当に若菜だよな?」

「そうですよ。藤宮若菜です」

「……少し若返ったな」

 言いながらひのえさんは、まるで陶器でも触るみたいに優しく、わたしの頬を撫でた。

「院でしっかり勉強したら霊力が上がったというか、安定したという感じです」

「天使に、なったんだな……」

「ひのえさんに会うにはそれが最短だと思って。本当は天使部隊に入りたかったんですが、残念ながらわたしには武術の才能がありませんでした」

「あー、っぽいな。ぽいぽい」

「ひどい。一応十年次までは武術全般頑張ってたんですよ。先生に止められましたが」

「おまえは部隊に入らなくていい。怪我したらどうすんだ。危ないだろうが」

「相変わらずの心配性ですね」

「好きな女の心配くらいさせろよ」

「……それは、どうも……」

「ん」

「……」

「……」

 会話が止まり、自然に顔が近付く。
 息が頬にかかってくすぐったい。
 唇が触れる寸前、躊躇うように一瞬動きを止めたけれど、すぐにそれが重なった。
 お互いの熱を確かめるように。
 唇が触れた。
 十八年ぶりのキスだった。
 そこから愛が溢れてきて、なぜだか突然涙が溢れてきた。
 ひのえさんは「泣くな」と言ってから、さらに唇を押しつけた。泣くな、はわたしの台詞。ひのえさんだって泣いている。
 愛されていると、愛されていたと、実感した。