「それは教えられない規則だから」
閻魔王は軽い調子でそう返す。
「それは分かってます、でもどうしても会って、話がしたいんです! 俺は彼女に、何も伝えることができなかった、だから……!」
「その子ときみがいつから、どんな交流をしていたかは知らないけどさあ、」
「恋人なんです! だけど何にもしてやれないまま、傷付けたまま彼女が死んでしまったから、どうしても話さないと……! ちゃんと謝って、話して、俺がどれだけ彼女が好きか伝えておかないと、前に進めないんです……!」
閻魔王が気まずそうに顔を背け、空を仰ぐ。
集まった野次馬たちもざわつき、顔を見合わせていた。
「あのねえ、丙くん……」
さっきまでの軽い雰囲気から一転、閻魔王は重々しく口を開く。
「規則は規則だし、俺は閻魔としての仕事をしなくちゃならない」
そして野次馬たちや職員、警備員たちを順に見渡し……。
「地下牢に連れて行け。処遇は追って言い渡す」
厳しい口調でそう言って、踵を返したのだった。
警備員たちが俺の両腕を拘束し、乱暴に立たせて身体を押す。
絶望感に脱力し項垂れると、ようやく冷静になれた。
そりゃあそうだろう。
天使と人間が恋仲になることは禁止されている。かつて天使と恋に落ちた人間が、次々に命を絶ったことが原因だ。
その掟には穴があり、命を絶たせなければ何年だって共にいることができる。誰にも知られなければ、何年でも何十年でも一緒にいることができる。
ただしそれが知られてしまえば、処罰は免れない。
俺は、処罰されるということか。こんなに人がいる場所ではっきりと、藤宮若菜は恋人だと言ってしまっている。
いや、言い逃れしようと思えばできないことはない。
でも俺は、絶対にそれをしない。したくない。だって彼女は確かに、俺の恋人なのだから……。



