遠くの光にふれるまで






 閻魔庁の門番に閻魔王への面会を申し出たけれど、入れてもらえなかった。
 大事な用がある、どうしても今話さなくてはならない、と伝えたのに聞いてもらえない。そればかりか中から警備員たちが出てきて俺を追い出そうとするから、必死に説明をした。

 でもやっぱり聞いてもらえず、突き飛ばされた。
 倒れた拍子に尻と背中に激痛が走るが、昨日から胸も頭も痛いんだ。大した問題じゃない。

「三分でいいんだ! たった三分閻魔王に会えたらすぐに帰るから! 今しかないんだ! 明日になりゃあ、状況が変わっちまうかもしれない!」

「閻魔様に何の用だ? 天使部隊副隊長としての話か?」警備員のひとりが言う。

「いや、私的な用だけど……じゃあ一分! 一分でいいから!」

 警備員は首を横に振る。

「じゃあ三十秒でいい! 頼みます! 後悔したまま過ごすのは嫌なんだ……!」

 両手を地面について頭を下げたけれど、やっぱり警備員は首を横に振る。

 そうしている間に往来には随分野次馬が集まり、警備員も増員され、騒ぎを聞きつけた閻魔庁の職員たちも窓から次々に顔を出した。

 腰に刀を携えた天使部隊の副隊長が、閻魔庁の前で騒いで土下座しているんだ。見ないはずがない。


 強行突破の文字が、頭をよぎる。

 腕には自信がある。刀もある。上手くいけば誰も傷つけずに最奥にいる閻魔王の元に辿り着けるかもしれない。


 頭は下げたままで、腰の刀に手をかけた、そのとき。


「一分でいいなら一分やろう。天使部隊第七番隊、副隊長の丙くん」

 軽薄な声が降ってきて、弾けたように顔を上げる。

 出入り口に続く階段の上に、男がひとり立っていた。
 赤い派手な着物姿で、長身の男。第六十九代閻魔王の、坂本さんだった。

 閻魔王はにっこり笑って「はい、今からスタート!」と手を差し出す。

 急なことに戸惑い、一瞬言葉が出なかった。まさか閻魔王が自ら出て来てくれるとは思わなかった。でもこうなれば、この機会を逃すわけにはいかない。

「藤宮若菜が六界のどこへ送られたか、教えてほしいんです……!」

 だから俺は一言で、要求を述べた。