「わたし……」
「ああ」
「昔から幽霊が見えたんです。でも普通のひとからしたらそれは異様で、異常で。だからもう幽霊とは関わらないようにしようって、誓ったんです」
「ああ……」
「でもあの日……ひのえさんから目が離せなくなった。触れるたび、キスするたび、行為の最中も……どうにかなっちゃうかもってくらい焦がれて……。だけど二度と会えないと思っていたから」
「ああ」
「本物、なんですよね……?」
「本物だよ。あと二時間くらい待ってくれたら、他の人間には見えなくなる。それまで待って確かめるか?」
「いえ、本物ならいいんです」
「そっか」
あの日と同じように、視線を絡ませて、ゆっくり顔を近付けて、キスをした。
ひのえさんを確かめるように、舌を絡ませる。
身体の芯が煮える。
そうだ、この感覚。この感触。
「ひのえさん……愛しています」
キスの合間、唇を合わせたまま言うと、ひのえさんは困ったような、喜んでいるような、照れているような、そんな顔をして「俺も」と返した。
「ああもう俺すっげー幸せ。どうにかなっちまいそう」
それはわたしの台詞だ。
この感情の全てを、どうやってひのえさんに伝えればいいのか。
わたしの語彙力じゃあ到底無理だから、とにかく今は、少しでも近付きたい。キスだけじゃ足りない。
リビングで、灯りをつけたまま、わたしたちはお互いの熱を確かめ合った。



