遠くの光にふれるまで






 次の日若菜さんから「野分さんに病気のこと話した」と聞かされた。

 店長に続いて野分さんも。やっぱり俺たち年下組より、大人のほうが話しやすいのかもしれない。
 でも明らかに若菜さんに気があった野分さんは、相当ショックを受けただろう。

「なんか、言ってました?」

 聞くと若菜さんは苦笑して「十五分くらい硬直してた」と言う。
 硬直するくらいショックだったらしい。

「でも治療を受けない理由は、納得してくれた」

「そっか。良かったっすね」

「うん。今度またごはん行くんだー。野分さんが連れて行ってくれる定食屋さんおいしくて。ちゃんと場所覚えたから、今度みんなで行こうね」

 本当に罪なひとだ。野分さんの気持ちを考えるといたたまれない。

 と同時に、まだ数回しか会ったことがないという野分さんが十五分も硬直するなら、恋人である丙さんが病気のことを聞いたら、どうなってしまうのか。
 だからこそ、まだ若菜さんが元気なうちに、丙さんに会いに来てもらいたいのに……。


 ヒバリも千鳥も今月末に昇格試験を控え、もう一ヶ月も来ていない。試験を終えても、あいつらのことだからまだしばらく来ないだろう。
 きっと試験の結果が出て、無事昇格することができたら、鼻を高くして自慢に来る。あいつらはそういう性格だ。

 となると、十月末……長ければ十一月にならないとあいつらは来ない。
 七月の時点で余命が三ヶ月から半年と宣告されていた若菜さんが、果たしていつまで元気でいられるか……。

 できればこんなこと考えたくないが、考えなくてはならない大事なことだ。

 もしものときは知り合いの天使を捕まえ頼み込んで、どうにか丙さんを連れて来てもらうしかない。