遠くの光にふれるまで






 手持ち花火の締めは線香花火と相場が決まっている。

 みんなで一本ずつ線香花火を持って、順番に火をつけていく。若菜さんは真剣な顔で、玉を落とさないように頑張っていた。

 ヒバリは早々に玉を落とし、「雲雀は集中力がないな」と笑った千鳥も自滅した。
 店長は婚約者に邪魔されちょっとした口論になっていたし、俺と春一は地味に終わった。
 残っているのは若菜さんと花とあかり。

 そしたら花が、こんなことを言い出した。

「ねえねえ若菜さん、あかりちゃん知ってる? 線香花火の火花が小さくなってから、玉が落ちるまでに願い事を十回心の中で繰り返すと、願いが叶うんだって」

「そうなの?」

「ええー! じゃあお願い事しなきゃ!」

 そんな話は聞いたことがないが、若菜さんとあかりは静かに目を閉じたから、恐らく花の言うことを信じて願い事を繰り返しているんだろう。

 が、すぐに若菜さんの玉が落ちてしまい「ああー……」と心底悲しそうな声を出す。続いてあかりの玉も。最後に花も玉を落として、花火の灯りが全て消えた。

「もう、嘘だよって言いたかったのに、言う前に落としちゃうんだもん」

 やっぱり嘘だったらしい。

「ええ、嘘なの? 九回目で落ちちゃったから、ちょっと落ち込んだのに」

 口を尖らせながらも笑う若菜さんと、ばっちり目が合った。
 試しに手招きしたら、案外簡単に近寄って来てくれた。

「そんなに願いが叶ってほしかったんすか?」

 試しに聞いてみる。

「そりゃあね」

「何を願ったか、聞いてもいいすか?」

「まあ、嘘だったんなら言ってもいいか」

 そして若菜さんは背伸びして、俺の耳元に少し近付いてから「ひのえさんが元気でいてくれますように」と囁いた。

 言い終えて背伸びをやめた若菜さんの表情は、照れくさそうだった。

 切なさに、拍車がかかった。