遠くの光にふれるまで






 再び人混みに紛れて歩き出し、出店の一番端っこまで辿り着くとすっと道を反れて、花たちに連絡した。
 花たちの居場所――花火が見やすいように、丘を少し上がった場所にいることを聞いて、混雑が治まったら合流することになった。
 その間、若菜さんはさっき買った金魚のガラス細工を大事そうに胸に抱いていた。

「ちょっとくらい、かっこつけさせてくれないと」

 言うと若菜さんは「あはは」と笑って謝罪する。

「ごめんね。とうごくんに買ってもらうわけにはいかないから」

「年下だからっすか?」

「そうじゃなくて、これ……」

 そこで少し言葉を止めて、照れくさそうにはにかみ、頬を掻きながら、続きを話し出す。

「あんまり可愛かったから、お土産にしようと思って。ひのえさんの」

「え?」

 聞いた瞬間、最近は落ち着いていた心臓が、ばくんと大きく跳ねた。

「さっき少し宿木さんに聞いたら、仕事が忙しいみたいだって言ってたから。夏らしいこと何もできていないんじゃないかなって。金魚なら夏っぽいし、ガラス細工は涼しげに見えるし、この大きさなら邪魔にならないだろうし」

「そっすか……」

 鼓動が速まったせいで良い相槌を打てなかったと気付いて、慌てて「喜んでくれるといいっすね」と付け加えた。
 若菜さんは「そうだね」と笑顔を見せた。

 丙さんが会いに来るのを、ただ待つことしかできないなんて。

 このまま待たされ続けるなら、俺は丙さんを恨んでしまうかもしれない。

 仕事が忙しいから来れないって。若菜さんと付き合い始めた頃は、仕事を抜けてまでこっちに来て、朝まで俺に説教したくせに。
 それなのに今は、手紙で呼んでも来ないなんて。

 あのひとは一体何を考えているのか……。

 こんなこと考えたくはないけど、もしかしたら丙さんは、このまま若菜さんとの関係を終わらせるつもりなのかもしれない。
 ヒバリはそれを知っていて、だからこそこんなに頻繁に現世に来るようになって、若菜さんを気にかけるのかもしれない。だからこそ丙さんの話をしたがらないのかもしれない。

 若菜さんはこんなに丙さんを想っているのに。
 初デートすらできず、喧嘩したまま、終わってしまうなんて……。