遠くの光にふれるまで





 流しそうめん、土用丑の日のうなぎ、バーベキューと食い物系が続いたから、次はどこかに出かけようと、春一のたどたどしい運転でひまわり畑を見に行った。

 そのあとは花の提案で肝試し。みんな霊感があって霊や天使と話すこともあるのに、肝を試す必要性を感じない。
 なんなら、この町の心霊スポットである廃墟に棲み付いていた霊たちのほうが驚いていた。
 なぜなら花と春一が霊たちを捕まえて「こんなところにいたら危ないよ」「安心して迎えを待つ良い場所があるんだ」と説得し、その場所を丁寧に説明し始めたからだ。
 そんな場所があるの? と首を傾げる若菜さんに、霊たちが最後の時を過ごすバーの話をしてあげた。
 浮遊霊は悪いやつらに捕まりやすいし、未練が募ると悪霊化したりする。それを防ぐため、迎えを待つ間に留まるバーがあるのだ。スタッフは全員天使。興味があるのなら今度連れて行ってあげようと思った。

 次は海。突発的に行ったからみんな水着を持っていなくって、砂遊びをしたあと海の家で飯を食って帰って来た。


 花と春一には、若菜さんが仕事を辞めたことだけを話した。
 ふたりとも「そんなに体調が悪いの?」「体調が悪いのに連れ回していいのか?」と心配していたけれど、体調よりも色々思うところがあったらしいと伝えると、納得したようだった。
 若菜さんの人生であり、若菜さんの判断なんだ。あれこれ言える立場ではないと理解したのだろう。


 そのあとも動物園に行ったり水族館に行ったりしたが、その間、丙さんが現世に来ることはなかった。

 バーベキューをした日にやって来たヒバリに「丙さんはやっぱり来れないのか?」と聞いてみたら、やつは気まずそうに顔を反らして頷いた。朝から晩まで隊務に追われているらしい。
 やっぱり副隊長ともなれば仕事が山積みなんだな。言うとヒバリは軽く舌打ちをして「あのひとは現世に来る気がねえだけだよ」なんて吐き捨てる。様子がおかしい。喧嘩でもしたのかもしれない。

 確かめようにも、それっきりヒバリは来なくなってしまった。川遊びの日にやって来た千鳥に聞いてみると、どうやら近々昇格試験があるらしく、鍛錬に励んでいるらしい。千鳥も試験を受けることになったから、しばらくこっちに来れないかもしれない、と。申し訳なさそうに言った。

 昇格試験は九月末。若菜さんの余命はあるだろうが、この先どこまで元気でいてくれるか分からない。だからできる限りみんなで遊びたいのに、なんともタイミングが悪い。
 そんなことを考えて、ため息をついた。
 仕方ないこととはいえ、若菜さんの余命のことや、どこまで元気でいてくれるかを考えるとは……。

 今はただ願うしかない。
 若菜さんが一日でも長く元気で、生きていてくれますように。
 丙さんが早く、若菜さんに会いに来てくれますように、と。