「で、おまえも一緒に探してんのか?」
若菜を見下ろしながら聞くと「困っているようだったので」と苦笑する。やっぱり少し顔色が悪い。
「お人好し過ぎるだろ。おまえはこのひとたちが見えるけど、普通の人間はおまえがひとりで道端にしゃがんでるようにしか見えねえぞ」
「うーん、でもわたしにはちゃんと見えますし、困っているひとを素通りできませんよ。幸い今日はお休みで、時間はたっぷりありますから」
若菜には俺が見えているが、他のやつらは見えない。ひとり虚空を見上げて話す女は、はたから見たら異常だろう。
それでもこの女は、気にしていないようだった。
これが藤宮若菜という女だ。そしてこういうところが、こいつの良いところでもあった。
「仕方ねえなあ……」
「え、宿木さんも手伝ってくれるんですか?」
「今日は非番だし、暇だからな」
この女は人を引き付ける不思議な力がある。そんなことを考えながら、俺もその場にしゃがみこんだ。
それから数時間かけて、指輪を見つけた。落ちていた場所は当初探していた道端なんかじゃなく、少し離れた公園の中。ベンチの上だった。
どうやら真っ白な顔色の青年はその生涯が終わる直前、この公園のベンチで休憩していたらしい。そのときに落としたのか。
指輪を見つけて未練を解消した青年は、穏やかな顔で上っていった。
「天使部隊の隊士殿も一緒に探してくれたんだ。これで未練が解消しないなら困る」
藤原組長がそんな悪態をついて、
「本当ですねえ。天使部隊の方なんて普段会えないから、びっくりしました」
新人の梅田も同調する。
「天使の方たちもいろいろなお仕事があるんですねえ」
若菜は間延びした声でそう言った。
「俺からしたら、き組の方々と若菜が顔見知りっていうのがびっくりだけど」
「この間知り合ったんです。そのときは人探しを手伝いました」
「藤宮は優秀だよ。鈍くさい梅田よりずっと」
「わ、わたしだってたまには役に立ちますよ!」
「そうかあ?」
「そうです!」
「ふふ、梅田さんだってこの間、尋ね人を探し当てたじゃないですか。藤原さん、ちゃんと評価してあげてくださいね」
「俺は梅田より、藤宮を評価するけどな。こっちに来たら天使になれよ。そんでうちで働け」
「それはわたしも大歓迎ですよ! 藤宮さん、お待ちしてます」
「いやあ、どうだろう」
もうすっかり馴染みらしい。なんなら同じ天使の俺よりもき組のふたりに馴染んでいる。若く見えても結構な老齢で、近寄り難い雰囲気の藤原組長もスカウトするくらいに。
こいつは本当に人を引き付ける力があると確信した。



