焼けた肉を頬張りながら、しばらく女を見ていた。
燈吾たちよりいくつか年上らしく、なるほどさすがによく気がついてよく動く。
つーか体調不良でまとまった休みがどうとか言ってなかったか? あんなに忙しなく動いていいのか?
そうしていると燈吾が隣にやって来て「なに若菜さんばっか見てんだよ」とかわかうように言う。
「いや、良くできた女だなと思って」
「手ぇ出すなよ?」
「ったりめーだろ、先輩の女に手ぇ出すかよ」
言うと途端に燈吾は驚いた顔をする。
「知ってるのか。てっきり天部には内緒で付き合ってるのかと」
「知ってるのは俺だけだ。暴言吐いて傷付けたってのもな」
「暴言? 丙さんが? 俺は意見の相違で喧嘩したって聞いたが」
「意見の相違?」
ああ、なんて。なんてできた女なんだ。
丙さんの話ぶりじゃあ、結構一方的な印象を受けたが、女に言わせりゃあ意見の相違による喧嘩。丙さんだけを悪者にしないってわけだ。
人間の女になんか興味はなかったが、……いや、なんでもねえ。
「しっかしなんで燈吾と知り合いなんだよ。人間からしたら年も離れてるだろうに」
「まあ近所だしな。風邪引いたり怪我したりすりゃあ、うちの病院に来るんだよ。俺が小学生の頃からだから……もう八年くらいか」
「鼻水垂らしながら棒切れで俺に勝負を挑んできてた頃か」
「垂れてねえ」
輪に入らず縁側に座っていた燈吾と俺に気付いて、女が皿に野菜をたっぷり乗せてやってくる。
「お肉ばかり食べてちゃだめよ、とうごくん」
「ちゃんと食ってますって」
「やどりぎさんも、はいどうぞ」
「あ、おう……」
女はにこやかに皿を差し出す。が。俺の名前がどう聞いても平仮名で呼ばれている気がする。まあ名前なんて口で言っただけじゃあ伝わりにくいこともあるけど。
ちょうど燈吾が千鳥と花に呼ばれて立ち上がったから、俺は女に話しかけてみることにした。
「俺の名前、憶えてるか?」
女は驚いたような顔をして、視線を斜め上に反らす。
「やどりぎ、ひばりさんですよね」
「漢字で書けるか?」
「え、あ、えーと、すみません、分かりません」
素直だった。



